アッテンホーファー (ATTENHOFER)

 アッテンホーファーはフリッチと同様にチューリッヒ(Zürich)のスポーツ店の名前だったようだ。戦前から存在していたようだが文献への記述は極めて少なく、唯一「ピッケルのカルテ(参考文献6-1)」の中に「直線的だがビョルンスタットほどの個性はなく、やや優し過ぎる感じでどこか迫力に欠ける。我が国には何本も入っていない。銘とマークは左右に刻まれている」と記されている。


[千葉県八日市場市、中台格之氏所蔵]
 ヘッド長30.0p。製作年代は不明だが戦前かあるいは戦後の早い時期の物だと思われる。「ピッケルのカルテ」で述べている「直線的なピック」というのはこれを指すのであろう。ピック長に対してブレード長が短く、ブレードの形状は正三角形に近い。確かにビョルンスタットほどの個性はないがこれにはこれの個性があって極めて印象的なピッケルである。
 銘はピック両面に刻まれていて、背面にはアラリンホルン(Allalinhorn、4027m)のシルエットが刻印されている。このことからこのピッケルはシエール/ジーデルス(Sierre/Siders)のF.アンデンマッテンが供給していた物であると考えられる。