カシン(CASSIN)

 カシンはイタリアの有名な登山家リカルド・カシン(Riccardo Cassin)が1947年に創立した登山用品を企画・販売する会社であり、コモ湖の近くのバルマデラ(Valmadera)という町に本拠地がある。かつては主にピトン(ハーケン)、カラビナ、ロック・ハンマー、ヘルメットなどの登攀用品が有名であり、現在もピッケル、アイゼン、ハーネスなど重要な登山用品を扱う会社として存在している。
 
 
 リカルド・カシンは1909年1月生まれ。1935年チマ・オベスト・ディ・ラバレド北壁初登攀など地元北イタリアのドロミテで腕を磨き、1937年ピッツ・バディレ北東壁初登攀、同年グランド・ジョラス北壁ウォーカー・バットレス初登攀、などの輝かしい登山歴を持っている。戦後は1954年イタリア隊のK2遠征(8611m、コンパニオーニとラチェデリが初登頂)を企画したり、1958年のガッシャーブルム4峰遠征(7980m、ボナッティとマウリが初登頂)では隊長として活躍した。頑健な身体に恵まれ、今も健在で90才を過ぎた現在もカシン社の顧問として週に2回程度会社に顔を出しているとのこと。



Cassin(1) [鹿児島県屋久町、榊原浩平氏所蔵]
 ヘッド長28.0p。大きなカーブを描くピック、カップ型ブレードなどこの時代(1970〜80年代)の特徴が良く表れている。ただしこのモデルはカンプ/インターアルプのセンチネルルージュと同じモデルのように見える。どうやらカシン社のピッケルは近所のカンプ社からOEM供給を受けていたと考えられる。











Cassin(2) [静岡県函南町、中村栄一氏所蔵]
 ヘッド長31.2cmの大振りのピッケル。1960年代に作られた物と思われる。シャフトは樹脂で強度を増したレキシロン・シャフトを採用している。