ヘスラー(HÄSLER)
 Gotlieb H
äsler
 ヘスラーはベルナーオーバーラント地方グリンデルワルトの麓側約5qに位置するルッチェンタール(Lütschenthal)で作られた。作者の名前はGotlieb(ゴットリアベ)であり、1代だけのピッケル鍛冶であったようだ。日本には比較的早い時期に導入され、1921(大正10)年に最初に輸入された。1940年頃まで製作していたようである。画家であり随筆家でもあった上田哲農(1911-1970)愛用のピッケルがヘスラーであった。

             ルッチェンタールの家並み
  上田哲農のヘスラー[雑誌「岩と雪」第20号表紙]


G.HÄSLER (1) [群馬県榛名町、佐々木直氏所蔵]
 1920年代から30年代頃製作されたと思われる古典的な形状のピッケルである。ヘッド長は30.7p、全長90p、重量950g、ヘッドは頭抜き構造になっている。ブレードは扇形で両刃、ブレードの下部側肉は削り落とされていない。フィンガは148oで2点留め、シャフトは下方向にテーパが掛かっている。ハーネスは寸胴でピック側からマイナスネジで留められている。
 ヘッド背面にはルッチェンタール近くのヴェンゲン(Wengen)にいた最初のオーナー名が刻まれている。














G.HÄSLER (2) [東京都練馬区、田村朋之氏所蔵]
 1930年代頃製作されたと思われる。ヘッド長は30.7cm、全長90cm、重量1060g。ヘッドは頭抜き構造になっている。ブレードは上掲の物が扇形であるのに対してこれは肩張扇型である。ヘッド全体もカーブが強くなっている。フィンガは146mmで2点留め、シャフトは下方向にテーパが掛かっている。ハーネスは寸胴でピック側からマイナスネジで留められている。
 全体的に見てもあるいは細かい点を見てもヘスラーはシェンクの影響を受けていたように感ずる。