無銘(1) [神奈川県大磯町・佐々木直氏所蔵]
 作者を示す銘がどこにも刻まれていない無銘のピッケルである。ヘッド長30.6p、全長93p、重量は980gであり、ピック下側には10段の刻みが入っている。
 ヘッドには両面とも何も刻まれていないがフィンガのピック側に二千六百年と刻まれている。これは皇紀(神武天皇即位の年を元年とする紀元)のことであろう。皇紀2600年は西暦では1940年(昭和では15年)である。このピッケルはこの年に作られた物と考えられる。ブレード側にはこのピッケルの注文者であろう野中達三という名前が刻まれている。
 優雅な曲線と、細身で薄いピックから同時代の山内や門田を見本にして作られた物と思われる。