ラーリング(RALLING)
 ラーリングはオーストリア西部インスブルックの南南西約10qにあるフルプメス(Fulpmes)に存在したピッケル鍛冶だった。鍛冶職人の名前は銘によるとフェーリクス・ラーリング(Felix Ralling)という人らしいが詳細は不明。第2次世界大戦後は会社組織にしたようで、銘にはF.Ralling Hammer werk(Hammer werkは鉄工所)と刻むようになった。
 ラーリングの製品は戦前の日本には入って来ていなかったと考えられる。戦後はリーベルマン・ウェルシュリー鞄凾フ商社が輸入した。カタログではなぜかラーリングではなくてローリングと呼んでいる。またフルプメスと呼んで販売していた登山用具店もあった。戦後の製品にはヒマラヤとアカデミーの2種類のモデルがあり、どちらも直線的なピックが特徴である。


FELIX RALLING, FULPMES
 1930年代から40年代に作られたピッケルだと思われる。ヘッド長30.7p、全長108p、重量1170gの長大な形状をしている。ブレードは極めて古風な三角形であり、フィンガとシャフトの連結には2本の銅製ピンが打たれている。また石突き部のハーネスが長めに出来ている。














ヒマラヤ・ピッケル、モデル・クーノー・ライナー(穴なし)
 ヘッド長32.0pの大振りモデル。銘に刻印されているクーノー・ライナー(Kuno Rainer)はオーストリアの登山家でヘルマン・ブールの同僚。









ヒマラヤ・ピッケル、モデル・クーノー・ライナー(穴明き)
 ヘッド長30.0pの穴あきモデル。









アカデミー・ピッケル
 ヘッド長31.0pでブレードはフラット。銘上段にはAKADEM. PICKELと刻印されている。AKADEM.はAkademie(アカデミー、英語ではacademy)の略であり、このピッケルがどこかの学校または学会によって権威付けられていることを表しているようだ。銘中段のMeister(マイスター、英語ではマスターmaster)は主人とか専門家という意味。










左ヒマラヤ・ピッケル、右アカデミー・ピッケル