シルト(SCHILD)
初代(the 1st.); Peter Schild (1883〜1969)
2代(the 2nd.); Peter Schild (1909〜1986)

 シルトはベルン州カンデルシュテーク(Kandersteg)のピッケル鍛冶である。初代、2代目共に同じ名前ペーター(Peter)であった。初代ペーター・シルトは1906年頃ピッケル作りを始めた。そして1930年代後半に2代目に代替わりしている。2代目ペーター・シルトは1980年頃までピッケル作りを続けていたようだ。
 カンデルシュテークがグリンデルワルト周辺から離れた所に位置しているためか、シルトのピッケルは第2次世界大戦前の日本には入ってきていなかったようである。戦後は英語読みしてP.シールドという名称で輸入された。
 カンデルシュテークは周囲を3000m級の山で囲まれた美しい湖、エッシネン湖(Öscinensee)の入口の町として有名である。現在もシルトの家はカンデルシュテークの同じ場所にあり、1階の鍛冶工場もそのままの状態で保存されているが既にピッケル作りは行われていない。ただしシャフト交換等の修理は3代目オスカー・シルト(Oskar Schild)が対応している。


  Peter Schild (2nd.)

シルトの鍛冶工場兼住居


シルトの火床(オスカー・シルト氏の好意によって火が入っている)


今も掲げられているピッケル鍛冶の看板


カンデルシュテークの家並み



1970年代に日本で販売されていたシルトのピッケル 「世界の登山用具」(参考文献6-3)から



2代目の銘
初代及び2代目が共通に使っていた銘



初代作 [群馬県榛名町在住、佐々木直氏所蔵]
 形状からして明らかに初代作と判断できるピッケルである。1910〜20年代の作であろう。ヘッド長28.5cm。全長90.5cm、重量1180g。フィンガ長180mm、銅のピン3点でとまっている。ヘッド頂部は頭抜き構造になっている。シャフトはやや丸みがある。またピック下には4段の刻みが入っている。ハーネスは小さく、銅でつないである。銘はシェンクやベントと同じく二重楕円である。。











2代目作
 ヘッド長30.0cm。ブレードはフラットで大きな曲線を描いている。1940年代から50年代の2代目作と思われる。
 ヘッドの付け根に使用者の名前と地名(G.Borner Ennetbaden)が刻印されている。石突きはワンピースの物が付いているがこれは後で付け替えた物のようだ。









2代目作
 スイス山岳兵用に納入された物で銘の右側に製作された年号が刻印されている。ヘッド長29.0cm。銘は、上段にP.SCHILD JUNIOR、下段にKANDERSTEGと打たれている。銘の中央の消えかかった文字はSCHMIED(独・鍛冶)である。Juniorの銘が打たれているので2代目作と断定できる。










2代目作 [東京都在住N氏所蔵]
 第2次大戦後作られた2代目作、1960〜70年代の物であろう。ヘッド長29.2cm、全長79.5cm、重量930g。ブレードは湾曲している。同時代のベントやウィリッシュに似た作風になっている。