材料
ピッケルの材料には炭素鋼と特殊鋼がある。鋼(こう・はがね)とは炭素を含んだ鉄の総称であり、人類が数千年に渡って利用してきた鉄は鋼のことである。
鉄は鉄鉱石を溶鉱炉で溶かして作る。この鉄には炭素や他の不純物が多く含まれるのでさらに精錬し炭素量を調整する。炭素量が0.035〜2%の鉄を炭素鋼と呼ぶ。炭素鋼にニッケル、クロム、モリブデン、タングステンなどを意図的に加えた鉄を特殊鋼と呼ぶ。
炭素鋼は含有する炭素の割合によって性質が変わる。炭素を多くすると引張強さ、歪みに対する強さ及び硬さは増大する反面、伸びや衝撃値は低下し、いわゆる脆(もろ)くなる。また炭素鋼は特殊鋼に比べて低温で脆くなる性質、低温脆性がある。ただし他の元素を加えないので原材料の価格は安い。
これに対して特殊鋼は炭素鋼の欠点を克服した材料であり次のような種類がある。
・ニッケル・クロム鋼;炭素鋼の欠点である脆さが改善される
・ニッケル・クロム・モリブデン鋼;ニッケル・クロム鋼の性質がさらに改善される
・クロム・モリブデン鋼;ニッケル・クロム鋼と同等の性質が高価なニッケルを使わずに得られる。
なお炭素鋼には脆いという性質があるが、かといってこれを材料にしたピッケルやアイゼンが使い物にならないという訳ではない。炭素鋼の持つ欠点も焼入れ・焼戻しなどの熱処理によって改善されるので通常の冬山で使う程度では充分な強度を保つことができる。
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